第1回 日本語の中に“カタカナ英語”を混ぜる 英単語は少しの工夫で飛躍的に覚えらえる その1

私は仕事柄、バイリンガルの人たち、つまり英語と日本語の両方を話せる人たちと話すことが多くあります。そのとき面白い事が起こります。会話は、取りあえず日本語から始まるのですが、だんだんと話に熱が入ってくると、英語が交じり始めるのです。

「それで、広いbeachを一人で歩いていると、なんだか、Oh, I'm part of nature(自分は自然と一体なんだ)みたいになって」
「それ、分かる。 Had a similar experience(似たような体験をした)」

 

 彼らは、別に意識して交ぜようとしているわけではありません。伝えたいと思ったときにピタリとはまるのが、たまたま英語だったというだけの話で す。はたから見れば、文字通り、“はた迷惑な話”で、どちらかにして欲しいということになります。ただ、このように2つの言葉を行き来しながら話すと、英 語だけあるいは日本語だけでは伝え切れない点がスパッと通じる気持ち良さがあるのです。この例の場合だと、haveを使って体験を伝える感覚が気持ち良い わけです。

 

 さて、いくら気持ち良いといっても、やはり日本語に英語を混ぜるのは奇抜な感じがするかもしれません。ところが、実は私たちの多くが、無意識のう ちにすでにそういう話し方をしています。「ファイルをダウンロードした」、「面白いアプリをゲットした」などと話したことはありませんか。そう、私たちは 英語を話すのが苦手だと言いながら、何気に英語交じりの、日本語を話しているのです。

 これは単なる「カタカナ英語」だという人がいるかも知れません。確かに、発音や語順などの問題はあります。しかし、これらの「カタカナ英語」はほ とんどが正しい意味で使われています。ですので、もう一歩踏み込めば、すぐに話す力につながり、流暢とまでは言えなくても、確実に通じる英語を口に出して 言うことができるようになります。

 

 さて、このように考えてよく見渡すと、私たちの周囲には驚くほどたくさんの「使えるカタカナ英語」があります。しかも、私たちはそれを、特に苦労することもなくほとんど無意識に覚えてしまっています。

 

 ここに「話せる」ようになるためのとても大切なヒントが隠されています。例えば、意図的にまだカタカナ英語で使われていない日本語をカタカナ英語 に変換するとどうなるでしょうか。「この件はテーブルしよう」といった具合に。この場合、テーブル(table)というのは「(いったん)棚上げする」と いう意味です。文字通りテーブルの上に置くと考えると良いでしょう。このようにすると、使えるカタカナ英語の数は飛躍的に増えます。そして、すぐにでも使 える、いわば即戦力の知識が猛烈な勢いで増えます。単語や熟語レベルで計算すると、1日20分程度の学習で1か月に500語ならまず大丈夫です。そのぐら い高速で確実に頭に入ります。

「この部品は、日本でマニュファクチャー(manufacture、製造)されています」
「今回の問題については、少しインベスティゲーション(investigation、調査)が必要だ」

 どうでしょう。今まで覚えられなかった単語でも、日本語の中に交ぜてしまえば、覚えられるような気がしませんか。

 このようにして基礎となる部分を短期間で大量に準備しておくと、あとの作業はとても楽になります。私たちは、つい「英語は英語で……」と考えがちですが、このように日本語をうまく利用すると、無理なく自然に英語が話せるようになります。